刀伊入寇 - 藤原隆家の闘い
歴史小説だと考えるには、
ちょっと登場人物がオールキャスト過ぎて、やりすぎ感がある。
でも、平安時代が舞台の時代小説なのだと考えれば、
ドラマチックで面白い。
この小説の要は、
都で道長が「望月の歌」なんぞを口ずさんでいるとき、
大宰府では外国の侵略を受けていた、
という一事。
なので、前半は題名とは裏腹に、
都の貴族たちの描写がダラダラと続く。
変人にして漁色家の花山院が引き起こす騒動に
巻き込まれていく藤原北家の人々が描かれている。
男たちの意地の張り合いや仕返しの応酬が延々と続いて、
「とい」という謎のことばと、謎めいた女が登場して
やっと伏線が現れた〜!という感じ。
さらには清少納言&紫式部や晴明なんかも登場。
たびたび起きる流血事件の描写を読んでいくと、
時代的には「枕草子」「源氏物語」の成立時期なのだが、
やってることは「平家物語」である。
後半に急展開で「刀伊入寇」が描かれる。
こうして物語として読むと、その被害の甚大さにあらためて驚く。
平安時代はホントに表の顔と裏の顔の落差が激しいなぁ〜。
もう少し最初から主人公を中心に描写して欲しかったのと、
小物的悪人の道長の造型にちょっと物足りなさを感じた。
また、源氏物語の創作エピソードは、蛇足だと思う。
読者によっては違和感が強すぎて引くような。