Happiness Is the Road 2: Hard Shoulder
2枚が一度に発売になっているが、彼らのサイトからは2枚セットで、かつ予約販売時に購入決定したファンについては、CD1枚につき80Pを超える歌詞&写真集がつき、ハードケースに同梱され、ボックス仕様で購入できる。(更に言えば、予約購入者全員の氏名がクレジットに謝意とともに印字されている。私も載りました!)
作風としては、おだやかなピアノに導かれて、人生というものをとらえた深淵な詩世界を幽玄で美しいサウンドと歌唱でつづっていくという最近のマリリオンの音世界を見事に最良の形にしたものが提示されている。刺激や新機軸、といったものを求めてはいけない。ここには熟練のアーティストによる唯一無比の音世界が広がる。21世紀のピンク・フロイドとでも言いたいところだ。
Clutching at Straws (Spec)
“詩人”と賞されたフィッシュ(vo)の壮大な詞と、それを見事に具現化する演奏隊の技量。ポップ性をも取り込んだ新しいプログレッシヴ・ロックの旗手として、華々しいデビューを飾ったマリリオン。しかし、1988年発表の4作目『旅路の果て』(本作)を最後にフィッシュが脱退。初期マリリオンは幕を閉じることになる…。
名作と云われた『過ち色の記憶』から顕著になったポップ化は更に進み、7分、8分といった所謂「大作」は1曲もない。しかし、各曲の表情は豊かで、全体を通して物語性を持たせている感じだ。
本作は「コンセプト・アルバム」とまでは行かないが、全体を通して、あるテーマが存在する。「有名になることと、そこから来るプレッシャー」である。ジャケットにはドラッグあるいはアルコール依存症で命を落とした有名人の顔が並ぶ。
フィッシュの詞も、小説をモチーフにした幻想的な作風から、人間の内面をえぐり出すような難解な作風へと変化している。「エピック」と呼ばれる後半の曲に、特にその傾向が強い。クライマックスは「ホワイト・ロシアン」だろう。8分の6拍子のこの曲は、シングルにはなっていないが、初期マリリオンが残した名曲の一つと言える。
また、オープニングは前作を敢えて踏襲したようで、短めの「ホテル・ホビーズ」から、叙情的な「ウォーム・ウェット・サークルズ」へのメドレーになっている。「ホテル~」は木琴のようなキーボードの音色から、フィッシュの印象的なヴォーカル・ラインが聞こえてくる曲で、非常に良い曲だ。後半はスピード・ナンバーに近い盛り上がりを見せ、スーッと引いていくように、次の「ウォーム~」へ移っていく。
前作のオープニング「絹の着物」~「追憶のケイリー」への流れも素晴らしかったが、こちらも負けていない。
後半には、有名人になってなかなか人前に出られなくなった自分たちを皮肉ったような、ユーモラスな曲「さらば青春の光/Incommunicado」という曲もある。これがこのアルバムからの1st.シングルだった。
また、「雨に打たれるシュガー・マイス」はヴォーカルが代わった現在でも演奏され続ける人気曲。割と明るいバラードで、ライヴでは大合唱が起きる。
本作は、期間限定・ボーナスDisc付リマスターの再発盤シリーズの1つ。このDisc 2 のレア度は飛び抜けている。2代目ヴォーカル:スティーヴ・ホガースの歌で、録音し直されて発売された次作『Seasons End/美しき季節の終焉』の、フィッシュの歌によるデモが多数収録されているのだ。あのままフィッシュが脱退しなければ、多分こういう曲を作っていただろう、という内容で、ファンには堪らないレア曲集である。ボーナスDisc付 2CDは売り切れつつあるので、ファンは後悔しないよう押さえるべし!!
Brave (Bonus CD) (Spec)
このアルバムのDisc.1のレビューは他の方たちにお任せするとして、おまけ的な位置づけにあると思われるDisc.2にスポットを当てます。
Tarck.1はオーケストラ・ヴァージョン。曲の雰囲気的にオーケストラが似合いそうだが、本物を使用せず打ち込みなのか、熱気がないのが残念。
Track.2はタイトルにジャムとあって、まさにジャムっているわけだが、そこには混沌としたプログレ的世界が展開されていて「おっ!」と思わせる。フィッシュ時代からマリリオンは曲に整合性のある構成美的なものを得意としていたが、これは曲が進むにつれ徐々に輪郭が破壊されていく。異なる側面の即興的BRAVEが垣間見れてとても興味深い。
Track.3と.5及び6.はアコースティック・ヴァージョン。背景がないと少し寂しいが、Track.6は逆にしんみりとしていて良い感じだ。
Track.4とTrack.10はBRAVEの選考漏れと思われる音源で、BRAVEの流れを汲んだ短めのインストゥメンタル。
Track.7〜9はデモ音源など、Track.11はリメイク、何れも本編とは曲が微妙に異なっており色合いが異なる。Track.11が終わった後に20分ほどの空白の時間があった後、冗談・遊びが入っており、ちょっと笑わせてくれる。
Thieving Magpie (La Gazza Ladra)
ヴォーカルのFISHはこのアルバム発売前に既に脱退(確か)。
個人的にマリリオンのサウンドにはじめて触れたのがこのアルバムです。ジェネシスに強く影響を受けたサウンド(特にヴォーカル)と超絶技巧やインプロヴィゼーションは少ないプログレバンドの印象があったので、あまり聞き込まなかったのですが、今聴くと非常に懐かしい。また、このバンドのサウンドは、メンバー同士のチームプレーで進行していくような感じで、バンドとして息が揃っています。
ジャケットにも、これまでのアルバムの登場キャラクターが描かれていたり、正統派のプログレバンドらしくて良いです。
Fugazi (Bonus CD) (Spec)
イギリスのポンプロックバンド、マリリオンの2nd。1984作
GENESIS風味のダイナミックなハードシンフォだった1stから、
今作ではややストレートで軽快な雰囲気となっている。
シンフォニックなシンセをバックに、スティーブ・ロザリーのギターは
メロディアスなフレーズを奏でつつ、ときにハードロック的な質感も垣間見せ、
パワフルなドラムの音も含めて録音が良いので、サウンドに迫力がある。
相変わらずフィッシュの歌声は濃厚で、今聴くとやや暑苦しいのだが、
そこも含めてカラフルなサウンドはプログレハードとしても楽しめる。