フォーレ:レクイエム(1893年版 ネクトゥー、ドゥラージュ編纂)
何て言うんでしょうかね? 演奏自体は名演奏の部類でしょう。そして合唱団が子供たちだということも画期的なものだとは思います。演奏自体も正統な演奏なんです。変なところにヴィブラートも、ポルタメントもかからずに、ひやひやさせられるところもない。私が批評している「コルボのレクイエム」のとおり、ここにはそれなりの祈りがあるとは思います。
しかし、それなら諸手を挙げてブラボーかといわれると「いや、違う」といわざるを得ない何かが、この演奏にはある。何なのだろうとずっと考えました。「Sanctus」の「tus」の部分の発音が「tis」と聞こえることだろうか(これはきっと意識的に発音させたんでしょうな)? それとも何かおっかなびっくり歌っているのがレクイエムっぽいのだろうか? いまだにわかりません。しかし、この演奏、何かわからないところで不満が出てくるんです。
すごく複雑な演奏です。このCDだけ聴いたなら発音の部分で「?」とはなっても星5個だと思います。しかし私みたいに暇さえあれば「レクイエム荒らし」をしている人間にとっては、決して星5個を与えるわけにはいかない。意気込み、充分理解します。日本人がここまで歌い上げた成果も認めます。しかし「何なんだろうな〜」的な疑問が残ってしまうんですよねえ。贅沢なんでしょうかねえ・・・?