時雨の記 (文春文庫)
率直に言って、ここに書かれているようなことは、現実には起こり得ないことのように思われる。現代では不可能―というよりも―これが書かれた当時に於いてさえ、いや、いつの時代に於いても、不可能な物語ではないだろうか? 管見するところでは、作者の実体験をモティーフとしているそうで、その点では、私小説としての側面もあわせもつようである。
作者のせつないほどの恋愛の理想への希求、不倫の悲しさ、未亡人に残された人生、当時の社会状況に置かれた女性存在のありようへの問いかけが、主人公となる未亡人・堀川多江の姿を借りて、ごくシンプルに、ごく自然に、小説という形式でしか表現できない手法によって描かれる。本来、世間から疎まれるような内容であるはずの不倫物語を、さらりと読ませてしまう、この抒情と洗練の未聞の深さが、本書が類書から截然と区別されるゆえんでもある。初読の際、どのように的確に語られた批評よりも、ひとつの小説が力を発揮するのは、まさにこのようなあり方であるような気がして、一種畏怖の感情にも似た、言いようない戦慄を味わったことを思い出す。
難を言えば、副主人公にあたる壬生(みぶ)という初老期男性のような立ちまわりをする人間が、現実にはいそうにないことである。むしろ、現実に反している気さえする。それにもかかわらず、その非現実的な人間が、かなり癖のある直情的で理想主義的な男性として、相当なリアリティをもって描かれる。その作者の力量にはまったく脱帽であるが―それ以上に、私はそこに、人生に対する作者の強い執念のようなものを感じる。いや、それは、愛情と言いかえてもいいものかもしれない。
こういう言い方が誤解を招くにちがいないことを承知で言えば、本書の意味のひとつは、女性作者が自己の言葉で、自己の女性としての理想を告白している点にあるように思われる。けれど、いったん語られてしまったそれは―もし、完読できる読者があれば―至高の物語として、けっして終生消えることのない感銘をこころに残し、その後の人生に、なんらかの形で影響をあたえつづけることであろう。深く、魂の底に刻まれた作者の至高の願いは、それがたしかな人生の真実をふくんでいるかぎり、生涯、篝火のように光を放ちつづけるであろう。
時雨の記
自分が40才を超える年齢になったら、もっと深く味わえると思った。
途中、何度か読むのを挫折しそうになったけど、最後には涙が出た。
愛人とか、不倫とか、そんな言葉を当てはめるには陳腐だし、なんつーか、間違った結婚しちゃったけど、最後には運命(宿命?)の人に出会って、終わりよければ全てヨシ!!幸せじゃーん!!て感じかな。(ちょっと、違うよーな気もする・・)
時雨の記 [DVD]
熟年世代の恋愛なのに初々しい。
渡哲也さんも、吉永小百合さんも、
まるで少年と少女のようでした。
特に、あの渡さんの可愛らしさ!
大人の貫録と少年の初々しさが
同居した魅力・・というのかしら?
感情表現も素直で子供みたい。
こういう男性って、素敵ですね!
古風な日本の美を感じる映画。
風景も美しく、絵はがきのようでした。
ちなみに私の友人曰く・・
「あんなキツそうな奥さんじゃ
浮気したくなるのも分かるよ・・」