吸血鬼ノスフェラトゥ [DVD]
ドラキュラという名前こそ権利の問題で使っていませんが
ドラキュラ映画としては原点となる本作
一般的なドラキュラのイメージである
耽美的で、マントを着た貴族の姿は本作品ではまだ確立されてません。
この後のベラ・ルゴシ主演『魔人ドラキュラ』がそのイメージではありますが
こちらの、ネズミ男のような風貌の方がより原作に近いとのこと。
世界最大の映画投票サイトIMDbでもTOP250にランク・インしており
ドイツ表現主義の歴史を振り返る際に外せない名作となってます。
ただ、今日の映画と比して「ストーリーだけで純粋に楽しめるか?」というと
やはり厳しいです。撮影技術とかの制約が大きいのですが、
私自身“朝と夜の描写が全く分からなかった”ですし、自分物の描き方も
サイレント時代風というか、心理描写などが極端でわざとらしく感じてしまうことが
いくつかありました。*台詞による表現がないので仕方がない。
映画という芸術は撮影技術とともにその表現の幅を広げてきたのだと思うので
古典というだけでむやみにオススメする映画でもないかと思います。
映画好きで、映画発展史を含めて好きな人にはよいかもしれませんが
映画作品自体で良し悪しを考えるならもっと後の時代、例えばハリウッドの黄金期(1930年〜)以降で
ないと一般人というか、テレビなど映像作品を日常的に見ている現代人の感覚からすると
楽しむのは難しい気がします。
一方、やはり原点としの輝きは永遠でドラキュラ映画の本流という部分では
見ておくべき作品で、これまで二次創作としてすでに知っている吸血鬼のことやヘルシング教授に
関しても、『もともと吸血鬼って、こういう話だったのか!』という素直な感動はありました。
これだけ気軽に映画を見ることができるようになった現代なので
【吸血鬼もの】という大きなジャンルの源流を知るのに、とても役に立つ作品かと思います。
吸血鬼ノスフェラトゥ 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
吸血鬼映画として超個性的なインパクトが強い。
吸血鬼の造型が奇怪で不気味で凄まじい。
吸血鬼の役者の怪演振りが半端じゃなくオゾマシイ。
吸血鬼物としてこれを上回るゴシック・ホラーは未だに出ていない。
「魔人ドラキュラ」(30)、「吸血鬼ドラキュラ」(57)も傑作ですが、個人的にはやはり本作の魅力には勝てない。兎に角 恐怖感、緊迫感、ゲテ物感、気色悪さ、そして滑稽な妖しい雰囲気感さえ(特に棺桶を抱えてうろつく姿が最高!)醸し出す演出効果が圧巻で他を寄せ付けないのだ。
リメイク版「ノスフェラトゥ」(78)も頑張っている(キンスキーとアジャーニの好演、秀作。)が本作には届かない。