妖しい傷あとの美女~江戸川乱歩の「陰獣」~ [DVD]
乱歩戦前の最高傑作「陰獣」の映像化です。ある程度忠実に原作を再現しながら、雑誌の連載小説と実際の殺人事件が同時進行するという斬新なアイデアなども見られ、独自の世界を形作っています。また、エロティシズムが強調されていて、いわゆるSMの要素を取り入れて、妖しい雰囲気のある作品です。琵琶(ではないかと思いますが、よく分かりません)の音色を使った劇中音声も効果的。
ヒロインは佳那晃子です。少し若すぎな感じもありますが、前半は薄桃色の着物と淡いピンクの口紅などで装い、殺人鬼の影におびえる人妻の、心労でやつれた表情をうまく出しています。後半は、なかなか情熱的な演技を見せていて、天知茂の演じる明智小五楼郎と口づけを交わした、ただ一人の女性となりました。この天知茂は、相変わらず、お手本にしたくなるようなエンディぶり。また、謎の小説家を演じる中尾彬が強烈な個性を放っていて、特にクライマックスでの演技は迫力十分。それから親王塚貴子の妖艶な魅力や、荒井注、吉久美子、小野田真之の軽妙なやり取りも印象的です。
初期の型のワープロや携帯電話なども登場していて、この時代(1985年3月放送)の雰囲気を懐かしみながら見るのも楽しいと思います
黒真珠の美女 江戸川乱歩の「心理試験」 [DVD]
初期の作品と比べると、犯人の怨念とか残虐性、ヌードシーンは抑制され、ヒロインの知的な美しさが強調されているように思います。岡江久美子美しいです。知的なヒロインという点では、この作品がNo1でしょう。
ライナーノートにも書いてあったけれど、明智がヒロインを抱きかかえて去っていくラストシーンは天知茂が放送日の1週間前に亡くなっていることもあって印象的です。
長塚京三が被害者の1人と関係を持つ画商役で出演しています。当時は今ほどメジャーではなかったのでしょうが、小悪党を好演しています。今活躍している俳優のブレイクする前の姿を見られるのもこのシリーズの楽しみの一つです。