これでいいのだ。―赤塚不二夫対談集
うーむ。そうか。それでいいのかぁ。と、膝を打つ一冊。
タモリ・柳美里・立川談志・北野武・ダニエルカール・荒木経惟・松本人志との対談が収録されている。全篇これ飲みながらのお話。
タモリは、もう「いいとも」のおじさん。という意外に強烈なインパクトはなくなってしまった。興味の対象外だった。しかし、これを読むとやっぱり相当に変な人だし大きなエネルギーを眠らせている休火山なのだと思えてくる。二人の出会いからの交遊録には、本気の本気で馬鹿をやる凄みすらある。二人を結びつけたのはジャズプレーヤー山下洋輔であり、タモリもまた本質的に即興芸なのだ、とも思った。酒を飲みながら筒井康隆・唐十郎・山下らに「アメリカの宇宙飛行士と中国の宇宙飛行士の絡み合いをやれー」だのなんだののリクエストに答えているうちに芸が広がった。東京に呼ばれ、赤塚のマンションに暮らす。当の家主は事務所でロッカーを倒して寝ていたという。スポーツカーを乗り回し、服を勝手に着て、小遣いをもらっていながら、全く遠慮なく堂々としていたそうな。
どの対談も見所があるのだが、ダニエルカールに「アメ公」呼ばわりし無礼なのに愛がある赤塚の人柄。陰毛を数十年撮って来たアラーキーとのしみじみも良かった。赤塚が眠っている、立川談志との「笑い」道の話にも唸った。ココだけでも読む価値があり。楽しませてもらいました。
そして見えてきたのは、本気で馬鹿をやり続けてるこの人は、とことんカッコイイ。ということ。亡くなったら、この本も平積みにされドドンと売れることだろう。
おかしな監督映画祭~OKACINEMA 10min WORLD~ [DVD]
今年で6回目を迎えた、「おかしな監督映画祭」から、過去の傑作10本を
集めたDVDが発売された。
内容は、ラブストーリー、アクション、SF、バイオレンスなどバラエティに富んでいて
10本それぞれが、自主映画とは思えないクオリティの高さと
一般劇場映画では観られない、アイディアやストーリー展開など
充分楽しめる作品でした。
それもそのはずで、監督やスタッフ、キャストにはプロで活躍している人も多く
プロが、楽しんで遊んで作ったというのがとても感じられました。
主演女優4人も、皆さん個性的で、きれいな女優さん揃いなので、
女優さんを観るだけでもお買い得だと思います。
7/12には、早くも第7回の「おかしな監督映画祭」が開催されるようなので、
楽しみにしています。
おかしな監督映画祭公式HP
http://plaza.rakuten.co.jp/choukawasaki/
ちなみに、特典映像として監督インタビューがあるのですが、
私としては、女優インタビューやコメンタリーの方がいいと思いました。
ベスト・オブ・ベスト/日本の名歌
一言で言うと、クラシック音楽愛好家のためのCDで、楽しいはずの歌も“ノる”ことができず、いわゆる童謡や唱歌が聴きたくて買うと失敗すると思います。ほとんどがピアノのみの伴奏で、日本の歌がクラシックの歌曲調に歌い上げられています。歌声は美しいですが、歌が声楽家の個人的解釈で彩られており、万人の心に響く素朴な楽しさや悲しさが感じられるとは、基本的には言い難いですね。CDに歌詞が付いていないのも残念です。しかし、価格にしては曲数は多く、普段聴かないような曲を聴けるのは魅力です。また、日本の歌としては失敗でしょうとさえ言いたいほど、しっくりこない歌手の方もいる中で、伊藤京子さんの歌は本当に素晴らしく、「いのち短し 恋せよ乙女 」(ゴンドラの唄)、「唄を忘れたかなりやは」(かなりや)など、私は大好きです。ピアノ伴奏であるがゆえに、かえって歌が生まれてきた時代のレトロな雰囲気を醸し出す場合もありますし、価値あるCDであることは疑いありません。
赤塚不二夫対談集 これでいいのだ。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
7人の侍ならぬ、7人の天才との赤塚不二夫さんとの対談。
英雄は英雄を知るということで、非常に興味深く、本を買ったときから
ワクワクし通しでした。
かみ合うかみ合わないは、相性の問題もあるので、全然気になりませんでした。
ただ、松っちゃんは気を遣いすぎの感があり、一言一言からも伝わります。
返答もただ(笑)で、ノーコメントも目立ったのが少し残念。
それだけ、畏敬の念が強かったかもしれません。
それにしても、実際に声を出してゲラゲラ笑ったのはタモリさんとの対談。
これは強烈です。談志、たけし、アラーキーさん達も笑いましたが、
お腹を抱えて笑うほどまではいきませんでした。
タモリさんは赤塚さんに感謝の態度を一切示さず、そこが大変気に入ったと
対談の中で出てきます。あれほど、赤塚さんにお世話になりながら。
読後に赤塚さんのお葬式でタモリさんが弔辞を読んだときに
「わたしもあなたの作品の一つです」と最高級の賛辞と謝意をこの一文に
込め、送ったことをふっと思い出しました。
数々の対談集の中でも5本の指に入る傑作です。