志を高く―私の履歴書
日本経済新聞に連載された「私の履歴書」を改訂して単行本にしたもので、著者は1981年から1990年まで富士通の社長を務めた山本卓眞氏である。
山本氏の生い立ちから戦争体験、富士通に入社してからコンピュータービジネスの立ち上げなど、成功者ならではのすばらしい履歴書だと感じるが、率直に言って、内容の大半は唯一無二のもとは言い難いという印象だった。
しかし、山本氏の2年先輩であり、富士通のコンピュータービジネス全てを担った天才、池田敏雄氏に関するエピソードと、山本氏が社長在任中に発生したIBM事件の顛末は、非常に興味深く読むことができた。この2点に関しては、他の誰にも書けない内容であろう。
特にこの本で始めて知った池田氏については、強烈な印象が残った。大企業の社員でありながら卓越した才能と強い個性をもって輝いた池田氏には、無いものねだりの混じった憧憬の念を感じる。