カシオペアの丘で(上)
一年の約半分は雪のせいで予定が狂いっぱなし。
隣の町までは何キロもあって、交流の機会はほとんどない。
幼稚園から高校までまわりのメンバーは同じ。
友達のお父さんが担任の先生だし、その奥さんは音楽の先生だったり。
これがごく普通の北海道の田舎町です。
ここから東京へ出ていくこと自体、大変なことです。
それが20年前であれば尚更ですし、
広い東京で偶然であった幼なじみと肩を寄せ合ってしまうのは、
自然の成り行きです。
北海道で生まれ育った人間には理解できることです。
重松さんはよく調べていらっしゃると思いました。
この予備知識がないと、ストーリーが飲み込みづらいと思います。
わたしは美智子の立場でこの本を読みました。
旦那様は尊敬しているし、いままで幸せに暮らしてきたけれども、
忘れられない人がいる。
手に入らなかったものは、何年経ってもキラキラしているのです。
この小説が受け入れられるのは、主人公たちと同世代か、
それ以上の人たちにでしょうね。
るんびにの子供 (幽BOOKS)
表題作は、地味で盛り上がりに欠ける作品だが、それだけに作者の力量がわかる。
この作品に賞を与えた審査員の目の高さが、他の作品を読めば理解できるはず。
どれもこれも素晴らしいが、特に最後の作品は秀逸である。
ホラーとしてだけではなく、青春恋愛ものとしてもかなりの完成度だと思った。
ぜひ作者の長編も読んでみたい。