逆光の頃 新装版
トン子ちゃんに挫折した私ですが・・・こちらはジャケ買い大当たりでした!(トン子ちゃんの人と気づかず購入)
京都の町で育ち、ちょっと軟弱でふらふらしてて、瓦屋根にぴょんと飛び乗り登下校する孝豊くん。
年中行事、町の不思議、美しい杉、気になる友達の女の子、担任の先生、近所のおじさんなどとのふれあいの中で、ピカッと彼の心は光ります。
過敏すぎるリリシズムにはならず、男の子っぽいけどちょっと甘えた感じの主人公と街と人々が、ストーリーをおおらかにし、かつ確実に時は流れています。
黒猫や天狗にどきりとさせられ、杉山の美しさにため息がもれ、黒ベタの夜に和みました。
少年や京都、ちょっとセンチメンタルな漫画が読みたい人、ぜひ手に取ってください。
赤色エレジー [DVD]
懐かしの名作劇画の映像化。冒頭、壮年の男性(原作の漫画家であり本作の監督でもある林静一さんらしき姿かたちの人物)が、かつての4畳半を訪れ過去を振り返るというシークエンスから物語は始まる。しかし、林さんご自身は原作を描いていた当時には同棲経験がなかったそうで、また、主人公のように東北が故郷でもないとのこと。林さんも職業アニメーターであったことから、『赤色エレジー』があたかも私劇画であるかのように「誤解」(もっとも林さん自身それを楽しまれているように見えるけれど)されることも多いようだが、この物語は案外クールな視点から描かれているように思う。物語を断ち切るかのような、ラストシーンでの「幸子」の所作―全編新作の絵そして色彩―が本当にすばらしい。
淋しかったからくちづけしたの―林静一傑作画集 少女編
繊細で儚げ、その一方でとても力強く大胆。
そんな魅力あふれる少女達を描く、林静一さんの40年の傑作選です。
単行本小説のような小さい画集ですが、林さんのシンプルで洗練された画面構成の全体図をよく見ることができる、ちょうどいいサイズです。また、94点もの作品が収められていて、ボリューム満点です。
内容は、表紙のような「小梅ちゃん」と同系統の絵が多く、横顔の少女が中心です。
他には87年のアニメ映画「源氏物語」(キャラクター原案担当)や、ジグソーパズル「立ち姿三姉妹」の絵といった、かなり大人っぽい作品もあります。
けれど、どの作品にも、「和」のテイストと「昔の香り」があると思います。たとえ洋服を着ている少女でも、とても「日本」を感じ、そこが林さんの絵の最大の魅力じゃないかと思います。
感想は、とにかく素敵!のひと言です。
美しさと愛らしさの両方をかねそなえ、大人でも子供でもない危うさを秘めた少女達。透明で清純、なのに艶っぽく、とても惹かれるものがあります。
少女達が魅力的に見えるのは、その仕草のせいでもあります。貝殻を耳にあてる、紙風船をふくらます、笹船をつくる――手の表情がかわいい。そして着物の柄、帯の形、髪飾りひとつ取っても、おしゃれで粋。
そして色彩、構図の画面構成がとても上手い。林さんの絵がシンプルなのに全く飽きさせないのは、ここにあると思います。目の覚めるような青や黄。かと思えば、空気にとけてしまいそうな淡色。持っている色彩の幅が広く、色の取り合わせが上手い。人物の配置がよく、余白の空間が生きている。味のある背景、そして高い画力。
林さんの絵は、百年たってもすごくおしゃれだと思います。
ページをめくっていると、扉の隙間からこっそり少女達をのぞいているような気分になります。どきどきして、せつない。それは少女達自身の気持ちかもしれません。
そんな林静一さんの世界を、ぜひ見てください。
赤色エレジー (小学館文庫)
この作品が辛く哀しい恋の話であることは確かだ。しかし、これだけでは伝えきれないものがある。単純化された絵の白と黒の哀しい感じ。その間に現れるリアルな描写の迫力。それらが複雑に組み合わされていて、作品に一貫した静寂と緊張感を与えている。
二人の男女の相手に対するやさしさ、愛情を伝えきれない不器用さ、相手への甘え。
二人はそれぞれに家族との問題を抱えている。相手のことを思うたびに傷つき、傷つけてゆく。その悪循環に男女は流されてゆく...。
読み終わったあと、考える。「もし、僕がこの男女の立場になったとしたら、何ができただろう?」と。答えは...わからない。僕は、まだ若すぎる(高校生)。答えがあるのか、ないのかさえまだ...わからない。
若松孝二傑作選(5)アヴァンギャルド&フリー
「ゆけゆけ二度目の処女」は、その映像表現のみならず、音楽が素晴らしかった。
主演の秋山道男(当時は、秋山未痴汚)が歌うあの歌も入ってる。映画の音そのまま
ではなく、別録音された原盤のようであり、映画を観てなくても、アバンギャルド
な音楽に浸ることはできる。
こんな珍盤は、もう二度と発売されることはないだろう。
その意味でプレミアム必至。買っておいて損はない。