クール・キャンデー (祥伝社文庫)
実に、おもしろい。薄い本なのに。こんなに楽しめるミステリ、さすが、若竹七海。
最後のページまで、その最後の1行まで気を抜けません。こんな結末が待っていようとは、全く予想しませんでした。タイトル通り、ぞっとするような、ひんやり感。人間のうちに潜む「毒」が見事に描かれていますね。
それでも陰鬱な感じがしないのは、若竹さんならでは。なんといっても、登場人物のキャラクターがいいんですよねえ。強さも弱さも合わせ持った、ちょっと生意気盛りのかわいらしい渚。かっこいいだけじゃない、努力家の兄。それを疑ういやらしい(ほんとに嫌なやつ!って感じに描かれている)刑事たち。仕事とはいえ、こんな嫌みな人間とはあまり知り合いたくない。
他人のことなどおかまいなし、わがまま放題のお嬢様だった兄嫁の死から物語が始まります。兄嫁につきまとっていたストーカーが死んでしまったおかげで兄が疑われ、無実を証明するために奔走する渚がかわいい。子どもと大人の間で微妙な女心がよ〜くわかります。渚の心理描写が、物語全体を明るくしているのかな。でも、ただ明るいだけじゃない。年齢的には子どもでも、人というのは十分「毒」をはらんでいる。そんな恐ろしさも垣間見えます。
あっという間に読めてしまいますが、満足感はピカイチです。