うさぎとリザード [DVD]
ソン・ユリssiを「千年の愛」で初めて彼女を見たときは,「可愛い」だけで十分満足でした。
その後もずっと見守ってきましたが,「太陽を飲み込め」,「快刀 洪吉童」では主演をこなすなど,確実に女優として成長してくれていますね。
そして,チュ・ジホン監督の国内初作品の本作で待望の銀幕デビューを飾りました。
ピンクルという歌手グループ出身の彼女には,とかく“演技力不足”という風評が付きまとっていますが,本当に演技力が無いなら何本も主演級のキャスティングがされるはずはありません。見る人は見ているのです。
彼女は本作のインタビューの中で「大作ではないため,興行に対する重圧が大きくなかった」と述べていますが,これは謙遜でしょうね。
幼いころ米国に養子に出され,生みの親を探すため23年ぶりに故国を訪れた,メイという強い性格の女性役を,適度に共鳴させるしっとりとした演技でうまくこなしたと思います。テレビドラマで見せてきたは元気印のキャラよりも,密かに傷を抱えるキャラの方が似合うのではないかと思わせたことで,イメージチェンジはひとまず成功したといえるでしょう。
相方の男性を演じたのはチャン・ヒョクssiですが,治療薬もない不治の病で,心臓が2〜3秒間止まるという珍しい心臓病ミニジェスティン症候群を病むウンソルという役柄です。
痛みを持つ二人の愛がどのように描かれるか,ハンカチを用意してご覧ください。
ROCKERS[完全版] (スタンダード・エディション) [DVD]
PUNKといえばピストルズという浅い認識でコレを観るとちょっと理解するのが難しいかもしれない。
この後に出てくるアナーキーが非常にわかりやすい形でパンクロックを提示したのに比べて、確かにパンクっぽくはあるけれどロンドンパンクのような判り易いファッションでもなければ、歌詞も正直訴求力に欠けていて、特に当時のちょっとシラけた社会の雰囲気を知っていなければ伝わってくるものは薄いだろう。
このなかでフリクション、リザード、S-KENに関しては、この中で生き残ったバンドといえるので、楽曲や演奏力に少し魅力を感じられるかもしれない。
それ以外のバンドではmirrors、SSが面白かった。
mirrorsに関しては、非常にポップなリズム隊に絡むアバンギャルドなギターというユニークな楽曲に加えてドラムがボーカルを取る変則性もあって一筋縄ではいかない面白さが上記バンドと比べてもなお一層印象に残る。(ドラムが演奏後にインタビューに答えてる感じもちょっと香ばしく味わい深い。)
SSはそのあわただしい楽曲とちょっと何が言いたいのか判り難い歌詞、学生服のような統一された衣装とルックスも相まって、激しくも尚ポップな印象を与えてくれた。(今でいうエモコアに近いかもしれない。)
つけたせば、8 1/2もボーカルの面白さで印象に残った。
それから興味深かったのは、ファッションや景色からわかる風俗よりもインタビューに答える若者の話口調が、1965年生まれの自分から見ても古臭く、リアルに当時の感じを伝えてくるところだ。
もちろん今の若者とは全く異なるイントネーションで、語尾に「サ」を多用する独特の話し方は、当時は大人から疎まれていたはずだが、今改めてみると田舎の方言を聞いてるようでちょいダサな感じが、冴えないロッカーのテイストに尚一層の香ばしさを添えている。
TOKYO STREET ROCKERS 1978→1981
1978年から81年にかけての、日本のアンダーグラウンドなロックシーンを伝える傑作写真集。
当時、宝島などの雑誌で目にしたものから、初めて見るものまで、表紙のツネマツマサトシをはじめ、ホット&クールなモノクロショットの数々が納められている。(少し前に吉祥寺のライブハウスで観たツネマツ氏は、この写真の1・5倍の体格になってしまっていて残念だったがw)
地引氏は偉そうに能書きを並べるだけの凡百の音楽評論家と違い、写真を撮りながらテレグラフ、ヴェクセルバルクといった自主レーベル(今のメジャー資本でのインチキインディーズとは違う、本当のインディーズレーベル)の設立、運営に携わって、実際にシーンを盛り上げていた人なので信頼できる。
巻末にある各写真の説明は、そのまま当時のシーンの貴重な解説となっている。地引氏のあとがき、ECDによる帯の文章もいい。
残念なのは、巻末の写真の説明は通し番号で書かれているのだが、各ページの写真にはほとんど番号がふられていなくて、ノンブル(ページ数)もないこと。そのため説明文と写真を照らし合わせるのが大変。
Lounge Lizards
ジム・ジャームッシュなんかの映画にも出演している男前、ジョン・ルーリー率いるThe Lounge Lizardsの1枚目。プロデュースはマイルスで有名なテオ・マセロ。収録されている曲は全て2分から4分くらいのコンパクトなもので、トータルでも40分ないから、気がつくとすぐ最後の曲になってたりする。スパイ映画かピンク映画のサントラみたいな妖しいテーマが主体の音楽だけど、そこにアートリンゼイのパラノイアックなギターであったり、アントンフィアの上手いんだか下手なんだかよくわからない微妙にずれたドラムが絡むと、彼ら独特のフェイクジャズに姿を変える。すごく変。この変な感じが、長い間ロックばかり聴いてきた僕には、とっつきやすい。