ザ・レディ・キラー【プレミアム・エディション】
2000年代のブラック・ミュージック界において、
プリンス殿下を継ぐ 「異端の天才」 と言えば、アンドレ3000とこの人!と信じて
ついてきましたが・・・ついにやってくれました!!
今のR&B界を見回しても、恐らく太刀打ちできるものはいないとさえ思われる、
素晴らしい歌唱力。 ロン・アイズレーをも想起させる、伸びのあるファルセット。
" F**k You " はじめ、他の曲も本当に佳曲ぞろい。
エイミー・ワインハウス以降の英国流ヴィンテージ・ソウル・プロダクションとの
相性もバッチリで、こりゃ売れるはずですって!
ポップさの裏で、意地悪く舌を出す姿もちらつくだけに、
次作以降はまたわかりませんが、もう少しこの路線で聴かせて欲しいなあ。
2010年の名盤決定でしょう!!
ザ・レディ・キラー(初回限定スペシャル・プライス盤)
数々の名盤を生み続けて来たヒップホップチームGoodie Mobの元中心メンバーであり、卓越したラッパーでもある本作の主役
Cee-Lo Green、2002年に「Cee-Lo Green & His Perfect Imperfections」でソロ・デビュー。元々Goodie Mob時代から、本業の
歌手顔負けのソウルフルな声を活かしフック部分で素晴らしい歌を聴かせてくれた人だが、ソロ作品からは次第に曲の中で歌う
比重が高くなり、ついにリリースされたソロ3作目の本作ではラップを完全に封印し、シンガーとしての新たなスタートを切るのに
相応しい作品となっている。全体としては過去作での彼の超個性派キャラクターとしての押し出しが若干ソフトになり、意外な程
ポップな仕上がりになっている。
まず先行シングルとして発表された「F・・k You(ボーナストラックとして収録)」が最高にファンキー。どきりとする曲題からは想像
できない程爽やかなサザン・ソウル風の陽性サウンドに乗せてCee-Loが歌い上げる様は痛快で何回も繰り返し聴きたくなる。
事実ネット上で公開されたPVのアクセス数が半端では無かったようだ。ソロ初作の頃のダークで屈折したキャラクターを押し出
した楽曲ではこれ程人気を得ることも無かっただろう。尚、作品に収録されている「Forget You」はこれの歌詞違いで全英チャー
ト1位を獲得している。
作品はジャジーで思わせぶりなインストで幕を開けるが、続く電子ポップ仕様の「Bright Lights Bigger City」で早速従来の作品
との違いを見せつける。歌詞の内容も旋律も極めて判り易く、彼の力強い声が多重コーラスとなったフックは最高に印象に残る。
中盤では女性の妖しげな声が散りばめられたトラックに乗せ熱く歌い上げる官能的なバラード「Bodies」が良い。個人的なベスト・
トラックは、サザン・ソウルの香りをたっぷり漂わせる終盤のデルタ・バラード「Old Fashioned」。ここでの女性コーラス隊とCee
-Loの熱い掛け合いは正に黄金期の60・70年代ソウルを彷彿とさせ、「US男性ソウルシーンで最高の声」と言われるのも納得だ。
個人的にはソロ一作目の頃の毒を振りまく高速ラップを織り交ぜた「濃い」キャラクター性が若干薄まったのが残念だが、シンガ
ーとしての初作としては十分良いスタートを切れたのでは。彼の様に素晴らしい声を持っていると、それに伴う良質のメロディが
どうしても欲しくなる。曲によっては若干印象の弱いものも見受けられたので、次作ではさらにソング・ライティングをパワー・アッ
プさせて最高のソウル・アルバムを創って欲しい。これからの彼の活動に目が離せないと思わせる力作だ。