孤軍
1974年作品。穐吉氏の記念碑的作品だけでなく、日本人リーダー作として世界に誇るべき作品。
穐(秋)吉敏子は、米在住のジャズ・ピアニスト。日本人だが20代に渡米して以降50年以上音楽活動と生活の拠点を米国に
移しており、現在活躍する日本の若手ミュージシャンの海外活動の基盤をつくったパイオニアでもある。
本作は彼女の現在の夫、テナーサックス奏者のルー・タバキンと結成したビッグバンド名義で発表された初作であり、ジャズ
に和楽器の要素を導入したユニークな作品として、今尚世界中のジャズ・ファンに愛聴され続けている。
今作発表時に彼女自身が執筆した寄書きには、アメリカという異国で、日本人しかも女性ジャズピアニストという異質な存在
であった彼女が、単身渡った慣れない土地と、保守的な風潮の強いジャズという土壌で音楽家として活動するための相当な
覚悟が窺える。本作収録の表題曲「孤軍」は、第二次大戦終戦後もフィリピンのルバング島にて30年近く任務解除を待ち続
けた小野田寛郎少尉のエピソードに触発されているが、異国の地で孤独に苛まれながら何かと闘い続けた姿勢は二人に共
通したものであり、彼女が小野田氏にシンパシーを覚えたのも納得できる。
本作は彼女の日本人として、また一人の女性としての存在を音に刻みつけ主張した作品といえるだろう。
本作収録の5曲は、録音まで実に1年余りも練習を入念に重ねたというだけあり、彼女のピアノ演奏のキレっぷりは勿論、ビッ
グ・バンド演奏の隙の無い完成度と熱気に溢れた名演揃い。彼女の敬愛するデューク・エリントンのビッグ・バンド演奏を彷彿
とさせる吹奏楽器群の、独特の乾いた厚みのある音色が聴き手を魅了し離さない。
和楽器を導入した「孤軍」に目が向きがちの作品だが、他の4曲の強度も負けていない。特に冒頭の「エレジー」は、彼女の初
期の代表曲であり、哀愁あるピアノフレーズとビッグ・バンドとの拮抗した緊張とスピード感が堪らない。
現在も保守的な色合いの残るジャズという世界。その中で闘い続けながら土壌を拓いていった彼女の美しい活動ポリシーがそ
のまま見事な形となった傑作。彼女の入門作としても推薦できる作品だ。
HOPE「希望」
穐吉敏子さんの二十年来のファンです。近年、二年続けて穐吉さんのライブを聴くことができ、どちらのライブでも最後に演奏されたのがこの曲でした。「世界中に住むいろいろな人々が、愛し合わなくてもいい。互いにちょっとずつ我慢して、争い事にはならないようにくらしていけたら」という穐吉さんの言葉は、実感のこもった、納得のいく言葉として、今も自分の中にあります。ジャズのCDとして、あるいは穐吉さんのCDとして、最高の出来とは言いませんが、娘さんの伸びやかな声も心地よく、買ってよかったと思いました。英語の歌詞での歌唱のバージョンが優れていると思います。谷川さんの歌詞は、息継ぎが難しい感じですが、自分でも口ずさんだり歌ってみたい感じです(外国人の友人の前で、こういうのをカラオケで歌いたい)。娘さんの歌の伴奏という、特別な初体験、穐吉さんの緊張と気遣いと喜びが透けて見えるような気がしました。
ジャズと生きる (岩波新書)
エリントンやマイルスがバリバリの現役だった50年代に渡米して、彼の地で音楽活動に身を捧げてきた秋吉女史の自伝。たかく経営が難しいといわれるビッグバンドを存続させ、且つ何度も賞を受賞するなど、その活躍には目をみはるものがある。しかし、それは表面的なものであって、その音楽活動の裏には非常に厳しい現実が隠されている。本書はそんな裏舞台についても赤裸々に語られている。
ベスト・オブ・秋吉敏子
秋吉さんの半生を描いた"孤軍"を読んだあと
本に書かれている
小野田少尉をイメージしたという『孤軍』
故郷の満州と黄色い自分がアメリカで歯を食いしばってこれから生きていくであろうと作った『ロングイエローロード』
など
どんな曲だろうと聞きたくなって購入
「ロングイエロー」はトリオでのブルーノート版の方が好みだったので違和感があったが
ビッグバンドならではの曲の編成にこちらはこちらで好きな感じに
「孤軍」は古き日本男児の心を貫いての耐え忍ぶ姿なのか?
「エレジー」はかっこよすぎます。全然哀歌じゃないっすw
スピード感がいいですね
「タヌキの夜遊び」って
こんなカッコいいタヌキの夜遊びがあったらみてみたい。。
テンポと決めがかっこいいです。
古き良きゆったりとしたビックバンドではなく
スピード感あふれる曲とビックバンドならではの豪華さが味わえるアルバムかと。
そら秋吉さんが高い評価をされるわけだっと納得のアルバムです