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Larabie サウジアラビア 中東の鍵を握る王国 (集英社新書)

サウジアラビアという国家の主要な特徴をなす、サウド家とワッハーブ派の関係について書かれた本。建国の歴史から現代までのサウジアラビアを見通すうえで、非常に貴重な一冊である。興味深いのは、ワッハーブ派の教義とサウド家の志向がしばしば対立していることである。自動車やテレビの輸入や、教育改革、米軍駐留など、政府が進めようとする政策に、宗教機関が主要な抵抗勢力となっている。イランの統治形態と異なり王家が政治を支配するこの国において、宗教機関の権力的な位置づけは必ずしも明確ではないが、本書を読む限りでは非常に大きな権力を有していることが分かる。サウジ内で最も権威のあるウラマーによるファトワを筆者は数多く引用しており、そのおかげで同地におけるワッハーブ派の教義と現実への対応をよく理解することができた。筆者は同派の教義が他地域に広まることや、信仰者によるテロリストへの資金供与を問題視し、強く警戒感を抱いている。特にウサマ・ビン・ラーディンに対し、高名なウラマー達が公の場で(アル・ジャジーラのインタビュー)、彼への支持を明らかにしていることには、私自身も戦慄を覚えた。本書を読んでみて、過激なワッハーブ派の世論への影響力が絶大なように感じたのだが、穏健派や世俗的なリベラル派の組織や思想、世論への影響力はどうなっているのだろうか。その辺りにも少し言及が欲しかった。 サウジアラビア 中東の鍵を握る王国 (集英社新書) 関連情報




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